2. PHASE/0のインストール
PHASE/0をインストールする方法を説明します。個別の環境についてのインストール方法について このGitHub のページにも情報があります。
2.1. 動作環境
PHASE/0は、PCから最先端のスーパーコンピュータの様々な計算機環境で動作します。
PHASE/0プログラムはFortran(Fortran90およびFORTRAN77)とCで記述されています。これらのコンパイラが使える計算機システムが必要です。並列計算をする場合にはMPIライブラリがインストールされている必要があります。
必要(利用可能)なソフトウェア、ライブラリ
Fortran90コンパイラ、Cコンパイラ(必須)
MPIライブラリ(並列計算に必須)
行列演算ライブラリLAPACK, BLAS(オプション)
FFTライブラリFFTW(オプション)
Perl(オプション)・・・・PHASEツールで必要
Gnuplot(オプション)・・・・PHASEツールで必要
Python(オプション)・・・・PHASEツール,ASEで必要
PHASEの動作確認を行っている計算機環境を以下に示します。
PHASE/0が動作する主な計算機環境
計算機環境 |
コンパイラー |
利用可能ライブラリ |
---|---|---|
Linux |
GNU Compiler Intel Compiler |
LAPACK, BLAS, ScaLAPACK, MKL, FFTW3 |
macOS (Apple Silicon) |
GNU Compiler |
LAPACK, BLAS, ScaLAPACK, FFTW3 |
NEC SX Series |
Fortran90/SX |
Mathkeisan(LAPACK) ASL(FFT) |
Fujitsu FX1000, FX700 |
Fujitsu Compiler |
MPIライブラリは、OpenMPI, IntelMPI, SGI MPTなどに対応しています。
MKLのFFTW3ラッパーを介してMKLのFFTを利用することもできます。
ASLのFFTW3ラッパーを介してASLのFFTを利用することもできます。
2.2. 2次元版および3次元版について
PHASE/0は,バンドおよびk点の2軸で並列化を施した2次元版と,バンド,k点に加えG点の並列軸を加えた3次元版があります。低並列時では2次元版の方が高速に動作することが多いですが,高並列時は3次元版に軍配があがります。ただし,一部機能は2次元版でしか利用することはできません。
2.3. インストール方法
Linux環境を例にしてインストール方法を説明します。ここでは、Linux環境にIntel Fortran compilerがインストールされていることを想定します。 別のコンパイラを利用する場合はコンパイラの選択のときに、そのコンパイラを選択してください。また、MPIライブラリとして、OpenMPIを使用することを仮定しています。プログラムモデルの選択のときに「Serial」を選択すればMPIライブラリを使用しないでプログラムを作成することもできます。
まず、PHASE/0パッケージ phase0_2023.01.tar.gzをPHASE/0をインストールするディレクトリに展開してください。
$ tar zxf phase0_2023.01.tar.gz
ディレクトリ phase0_2023.01 に移り、インストーラーを実行してください(2次元版はinstall.sh, 3次元版はinstall_3d.sh;以下は2次元版の例)
$ cd phase0_2023.01 $ ./install.sh === PHASE installer === Do you want to install PHASE? (yes/no) [yes]
インストールするかどうか聞いてきますので、何も入力せずにEnterキーを押してください。
Supported platforms
0) GNU Linux (IA32)
1) GNU Linux (EM64T/AMD64)
2) NEC SX Series
x) Exit
Enter number of your platform. [0]
対応する環境の一覧が表示されますので、「GNU Linux (EM64T/AMD64)」に対応する1を入力して、Enterキーを押してください。
Supported compilers
0) GNU compiler collection (gfortran)
1) Intel Fortran compiler
x) Exit
Enter number of a desired compiler. [0]
対応するコンパイラーの一覧が表示されますので、「Intel Fortran compiler」に対応する1を入力して、Enterキーを押してください。
Supported programming-models
0) Serial
1) MPI parallel
x) Exit
Enter number of a desired programming-model. [0]
対応するプログラムモデルの一覧が表示されますので、「MPI parallel」に対応する1を入力して、Enterキーを押してください。
Supported MPI libraries
0) Open MPI
1) SGI MPT
2) Intel(R) MPI
x) Exit
Enter number of a desired MPI library. [0]
対応するMPIライブラリの一覧が表示されますので、「Open MPI」に対応する0を入力して、Enterキーを押してください。
Supported BLAS/LAPACK
0) Netlib BLAS/LAPACK
1) Intel Math Kernel Library (MKL)
x) Exit
Enter number of a desired library. [0]
対応するBLAS/LAPACKライブラリの一覧が表示されますので、「Netlib BLAS/LAPACK」に対応する0を入力して、Enterキーを押してください。
Supported FFT libraries
0) Built-in FFT subroutnes
1) FFTW3 library
x) Exit
Enter number of a desired library. [0]
対応するFFTライブラリの一覧が表示されますので、「Built-in FFT subroutnes」に対応する0を入力して、Enterキーを押してください。
Do you want to edit the makefile that has been generated? (yes/no/exit) [no]
作成されたMakefileを編集するかどうか聞いてきます。Makefileの確認や編集を行う必要がなければ、何も入力せずにEnterキーを押してください。
Do you want to make PHASE now? (yes/no) [yes]
PHASEのコンパイルとインストールを開始するかどうか聞いてきます。何も入力せずにEnterキーを押して、PHASEのコンパイルとインストールを始めてください。
PHASE was successfully installed.
Do you want to check the installed programs? (yes/no) [no]
PHASEが正常にインストールされたことを告げるメッセージの後、プログラムのテスト計算を実行するかどうか聞いてくるので、必要があればyesを入力し、Enterキーを押してください。テスト計算をしないならば、noを入力してEnterキーを押してください。テスト計算を実行して以下のような出力が得られれば問題ありません。
Do you want to check the installed programs? (yes/no) [no]
yes
Checking total-energy calculation.
Total energy : -7.897015156331 Hartree/cell
Reference : -7.897015156332 Hartree/cell
Checking band-energy calculation.
Valence band maximum : 0.233846 Hartree
Reference : 0.233846 Hartree
MPIプログラムの実行に用いるmpirunやmpiexecなどのコマンドを用いて実行します。
$HOME/phase0_2023.01/binを環境変数PATHに追加しておくと、PHASE/0のプログラムのパスを指定せずに実行でき便利です。
Bourne shell(ボーンシェル)系であれば、$HOME/.bashrcなどにPATHを記述します。
export PATH=$HOME/phase0_2023.01/bin:$PATH
C shell(シーシェル)系であれば、$HOME/.cshrcにPATHを記述します。
setenv PATH $HOME/phase0_2023.01/bin:$PATH
MPIライブラリのbinディレクトリにも必ずパスを通すようにしてください。
Bourne shell(ボーンシェル)系であれば、$HOME/.bashrcなどにPATHを記述します。
export PATH=$HOME/openmpi/bin:$PATH
C shell(シーシェル)系であれば、$HOME/.cshrcにPATHを記述します。
setenv PATH $HOME/openmpi/bin:$PATH
以下のようにして、PHASEを実行します。
$ mpirun -np 2 phase ne=1 nk=2
gfortranを用いる場合の注意点
Fortranコンパイラーとしてバージョン10以上のgfortranを用いる場合、上述のinstall.shスクリプトを用いた方法は失敗します。src_phase/Makefile
を編集する必要があります。
F90 = mpif90 -m64
この行に -fallow-argument-mismatch
という文字列を追加したのちに make
コマンドを実行してください。
2.4. Distributed-memory FFTWとリンクする方法(バージョン2022.01以降)
3次元版PHASE/0を Distributed-memory FFTWライブラリー とリンクし、MPI並列FFTの処理をこのライブラリーに任せることができます。MPI並列FFTの処理は3次元版のPHASE/0に組み込まれており、3次元FFTの2軸を面とみなし分割する仕組みとなっています。これに対しDistributed-memory FFTWは1軸を分割します。したがってPHASE/0内蔵の並列FFTの方がスケーラビリティが高いのですが、系の形状やカットオフエネルギー、G点並列数によっては1軸分割の方が通信が少なくなる場合があり、そのような場合に利用するとより高速な計算を実現することができます。
リンクする方法は環境などによって異なります。ここでは Intel MKLに付属するdistributed-memory FFTW とリンクする方法を紹介します。
まずはラッパーをコンパイルします。ここではホームディレクトリーの下の mkl
というディレクトリーにインストールする前提のコマンドを紹介します。
cp -r $MKLROOT/interfaces/fftw3x_cdft .
cd fftw3x_cdft
make libintel64 MKLROOT=$MKLROOT INSTALL_DIR=$HOME/mkl
Makefileを以下のように編集します。
CPPFLAGS = -D_USE_DATE_AND_TIME_ ...
に-DMPI_FFTW
を追加--start-group ... ${MKLHOME}/libmkl_sequential.a ...
に${HOME}/mkl/libfftw3x_cdft_lp64.a ${MKLHOME}/libmkl_cdft_core.a
を追加
環境変数CPATHにfftwのインクルードディレクトリーを追加します。
export CPATH=$MKLROOT/include/fftw:$CPATH
この状態で make clean;make
とするとdistributed-memory FFTWを利用することのできるバイナリーを得ることができます。
デフォルトの状態では内蔵の並列FFTを用います。Distributed-memory FFTWを使う場合は以下のような設定を施します。
control{
sw_mpi_fftw = on
}